Song of Galanthus
-3-

(ken side)


両肩から右肩へ、ゆるい伸びをしながら重心を移動させた。…もう少し寝られるかな。

今日のスケジュールは――なんて、答えなんか考えられるわけのない夢うつつな意識の中でも、現実の俺の隣に“何かある”のがわかった。
可愛い女のコだったらいいなと手を伸ばせば、ゴツンとした音。


添い寝の相手はギターだった。




目の前に広がった退廃した風景。もう記憶ははっきりとしていて、何が起きたのかもわかっていた。納得できているかというのは別として。
360度世界を見渡す前に、目に映った金色。綺麗な金糸。それは地面の灰色と交じりそうで交じらずにあった。

「ハイド…?」


乾いた声は彼に届かなかった。
俺は思わず駆け出していた。




久しぶりに走る感覚は何とも言えなかった。―あえて言うなら、頭とは別に身体が勝手に動いている、そんな感じ。
ほんの数十メートルなのに妙に疲れて、崩れ込むように座る。ハイドの肩を揺らして出る限りの声を出した。


「おい、ハイド、おい!」


ざり、と砂が鳴って、虚ろな瞳は俺を捕らえた。息を飲むほど、澄んだ球。


「――――ケンちゃん?」


変に懐かしい。
体を起こすのを手伝いながら、髪に付いた灰色の粒を掃ってやる。


「死んどるんかと思ったわ」

「なんか、急にくらっとしたんよ」


目をしばたかせながら、ハイドは呟いた。そして、何の合図もなく二人して遠くをぼんやりと見つめた。
このまま空気に溶けてしまいそう、そう思ったその時。


「ケンちゃん、ハイド」


はっきりと呼ばれて、自分の存在が確かになった気がした。



声の主は、テツだった。



...
back first next