暖色


いつもより、布団の中が暖かく感じた朝。
そっと目を開けるとカーテンの隙間にちらちら舞う雪。
一気に憂鬱な気分に落ちて今のぬくもりに逃げそうになった時、ドアが開いて声がした。


「テツくん、雪だよ」


心なしか弾んだ声。外に出る気満々で、ぐるぐるに巻いたマフラーにお気に入りのニット帽を被ったユッキーが可愛かったから、素直に起きることにした。



厚着は嫌い。コートを羽織ってマフラーをすればいいやと思って出てきた。でもそれは間違いで、1時間も雪の中にいる格好ではなかった。しかも、まだ降ってるのに。 立ち尽くす俺の足元にしゃがんで、ユッキーは飽きもせず雪玉をいくつも丸めている。小さいまま、いくつも、いくつも。


「ユッキー、雪だるま作るんやったら、もっと大きくせなあかんのとちゃう?」

「面倒だからいいの」


俺の沈黙によって会話は終了して、雪の降る音が聞こえそうなくらい静かな時間が流れていく。真っ赤になったその手を包み込んであげたいのだけど、無言の背中が『邪魔するな』って睨んでいるようで、ただ見つめているだけ。見ているだけで冷たくて、代わりに自分の手にはあって息を吹きかける。真っ白なそれが消えないうちに、ユッキーは立ち上がって「戻ろうか」と言った。


「もうええの?」


同じくらいの雪玉がまばらに並ぶのを指して聞いた。ファーのついたフードを被った頭が振り返って、じっと俺を見て言った。


「寒い」

「素手で雪触っとったら、そら寒いやろ」

「テツくんが」


しんしんしん。それはもう、雪の降る音が聞こえそうなくらい。 音を壊さないようにそっとその冷えた手を取って首にあてた。一瞬ひやっとしたけど、次第になじんでいく。


「あったかい」

「あったかいのは僕だよ」


引っ込めようとする手をもっとぎゅっとして、頬に誘導する。


「あったかい」


笑顔に微笑みで返されて。


「うん」



小さな雪玉は、やっぱり小さな雪玉の上に乗って、やっぱり小さな雪だるまになった。
真っ赤になった4つの手のひらを合わせていたら、やっぱりあったかくなった。

...