とりこ


愛おし過ぎるカナリアは
華奢な格子に囲われた鳥籠に
いつまでも入れておきたいって
そう思うのが当たり前だろう?




日曜日の朝、けだるさを誘う嫌味なくらい優しい日光が部屋の中に溢れてて、思わず窓を開けた。まだ冷たくなりきれてへん秋の風がふわりと真っ白なカーテンを笑わせる。

目が覚めたときにふと思い出した古いギターを納戸から引っ張り出してきて、軽く鳴らしてみた。今使こうてるのとはまた違った音色で、頭にぼんやりと曲が生まれた。何となしにそのイメージをなぞるように音として出力していく。

ある一点でなだらかに流れてた音楽は途絶えた。同じフレーズをぐるぐると。そこばっかりが妙に気に食わなくて。すると突然、音にメロディーが乗っかってきた。

ハイドの澄んだ声はギターをまんまと引き立て役にして、そのしっくりきぃへんかった一小節を俺の中に溶け込ませよった。


「なんや、ケンちゃん。作曲中?」

「ハイド、起きたんか」

「とっくに目ぇ覚めとったんやけど、ベッドから抜け出せんくてな」


俺の正面に椅子を持ってきて座ると、何気ない調子で「その曲、」とハイドは切り出した。


「今度、テッちゃんとユッキーに聴いてもらおうや」


軽やかに微笑んだその顔に、さっきのカーテンを思い出した。


「適当に弾いとっただけやからなぁ」

「俺、結構好きよ。今の曲」


もう一度、あのフレーズを口ずさむ。「最初から聞きたい」というリクエストにお答えして再度弾くと、聴き終えた彼は人差し指を立て目で合図した。


透明な声とはいうけれど、色でいうなら白。 真っ白な声がギターの音と手を繋いで、美しく響いた。

壁がなかったらどこかに飛んでいってしまいそうなほど、伸びやかな声。


「な、ええやろ!明日にでも集まって――」


本当に俺の前からいなくなってしまいそうな気がして、手を伸ばして相手の頭を引き寄せた。


「どうしたん…?ケンちゃん」

「んー、なんでもあらへんよ」


身体を寄せるにはギターがどうしても邪魔やから、床に下ろそうとネックを持ったその瞬間、ぷつりと玄が一本跳ねた。



「あー、切れてもうた」


切れた先を指で摘んで、息を吐いた。悲しくもなく、勿体なくもなく、ただほっとした。


「あの曲はこのギターの曲やから、もう弾かへん」


静かに諭すように言うて、強う抱きしめなおした。抱きしめれば表情は取れなくても、存在が確かめられる。




羽ばたかないで。
この腕の中にいて。




...