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土曜の夜 自分たちのような職種の人間にとって、曜日という言葉も、週休二日という言葉も意味を成さない。 1日が24時間である、という一般的な法則すらも無視されるケースは少なくない。 だから、今回は本当に特別だった。 今日は土曜日、明日は休み。 当たり前のようで、自分たちにはほぼありえないシチュエーション。 もちろんそれは偶然で、来週の土日はレコーディングやら収録やらをしているだろうけど。 それでも、「日曜が休み」という「普通さ」にひそかに感動した俺は、明日という貴重な1日をいかに有意義に過ごすかを真剣に考え、計画を練っていた。 のに。 「明日休みやんな。このままウチ来てよ、テツ」 仕事終わりの地下駐車場で、俺の幼馴染はいきなりそう提案してきた。 「なんでやねん」 「なんでって。ええやん、一緒に飲も」 よりにもよって何で今日そんな珍しいことを言い出すんだコイツ。 「飲むとか言ってケンちゃん、すぐ潰れるやん」 酒があまり強くないケンちゃんは、誘われたから行く、というのが大抵で、わざわざ人を飲みに誘ったりすることは滅多にない。 「たまにはええやん。なにテツ、俺と一緒は嫌なん?」 わざとらしく傷ついたような顔をするケンちゃんに、あぁ、また甘やかしてしまう…と思いつつ、俺は渋々頷くしかなかった。 一応ひとつ年上の、もう40になるようなオッサンのハズのケンちゃんは、何故かいつまでも少年のようで。ついつい可愛がりたくなってしまうのが本音でもある。言うと絶対白い目で見られるので口には出さないが。 「タバコ、あんま吸わんて約束すんなら」 なんて言いつつ、このままケンちゃんの家に行けばどうなるかなんてわかりきっているけど。 奴は飲み始めてたいして経たないうちにいつもより饒舌に音楽について熱く語りだし、美味しそうに大量のタバコをふかすのだ。 そしてその後の流れも簡単に予想がつくし、そのせいでせっかくの日曜なのに目覚めるのはお昼頃になる、というオチも手に取るように解ってしまう。 まぁ、ええか。 せっかくの珍しいケンちゃんからのお誘いを無下にするんは悪いし。 なんて自分に言い訳するのと同時に、特別な日曜を、特別な相手と共有するのも悪くないかもしれないと考えて。 嬉しそうに運転席へ乗り込むケンちゃんを横目に、 俺も助手席に乗り込んだ。 〜おまけ〜 その幼馴染コンビの会話の様子を密かに聞いていた一人の人物。 日本人、いや、人間離れした完璧なルックスをもつ男。 日本を代表するロックグループのボーカル。 そんな彼の心中は、 「ええなぁ、テツとケンちゃん…。」 俺もユッキー誘おうと思ぉたのに。仕事終わって気付いた時にはいないってどうゆうことやねん。 たしかに、あとちょっとでゲームが全クリするとは言ってたけどさ。ユッキーは俺よりゲームが好きなんや。 と、勝手にいじけていた。 「そうや!朝押しかけてやろ!」 押しかけ女房やぁ〜♪と上機嫌に一人車に乗り込む姿は、とてもテレビには映せない姿だった。 ... |