melting bitter chocolate


イライラする。
別にメンバーの仲が良いのはリーダーである俺にとって喜ばしいことではあるのだが。
なんなんや奴等は。


というか奴は。


ずっと一緒に音楽をやってきて、あいつを一番理解しているのは俺だと思っていたのに。
hydeの隣りにいるのは、これからもずっと自分だと思っていたのに。
よりにもよって、と言いたくなる。
よりにもよって、相手はkenちゃんで、よりにもよって俺の幼馴染みで。


つい1時間前に衝撃的な場面を目撃し、放心状態で晩御飯を食って、俺は部屋のベッドの上で1人悶々としていた。

だからあいつが部屋に入って来た事にも気が付かなかったんや。


「…お邪魔しま〜す」


この抑揚のない声は顔を見ずとも誰だかわかる。


「……もう入ってんじゃん。なんやユッキー。」

「じゃあ、もうお邪魔しました」

「………………。あっ!タバコ吸うなや!クサくなるやろ!」


壁に寄り掛かり、テッちゃんも吸う?なんて言いながらためらいもなく煙を吐き出すユッキーを睨む。俺がぜってぇ吸わんの知っとるクセに。


「吸わんて。なぁ俺ちょっと1人で…」

「さっきのハイドくん達」


1人でいたいから部屋戻れ、そう言い終わる前にユッキーは俺の方なんかには目をくれず口を開いた。


「ハイドくんとケンちゃんて…」

「言うなや」

「…………」


言うな…。蚊の鳴くような声でそう呟くのが精一杯で、俺は黙り込む。ユッキーもそれ以上は何も言わず、沈黙が続いた。






「慰めてあげよっか」


沈黙を破ったのはユッキーだった。


「は?」


一言そう言うと咥えていたタバコを手に持って俺の目の前にやってくる。

ギシッ

ユッキーはベッドに座る俺の肩を掴んでそのまま後ろに押さえこむ。奴は見た目の華奢さでは想像できない程に力が強い。 そのまま2人でベッドに倒れこんで初めて状況に気付いた。


「なっ何してんねん!離し…」


言葉を遮ったのは言葉ではなく、今度は唇だった。
俺の唇に当たる感触は、女性のものとは全く違くて、薄くて甘い香りもしなかった。


静かに体を起こし俺を見下ろしたユッキーの目は何故か寂しげで、触れる長い指は僅かに震えていたから、俺は何も言えなくなった。


いや、違うわ。ユッキーはそう言って無理に笑って言った。



「俺を慰めて」



そして俺たちはもう一度キスをした。

傷口を、舐め合うために。


...